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2022年08月06日更新日:2024年04月19日

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昨今マーケティング業界で重視されている「ユーザーインサイト」をご存じでしょうか?ユーザーインサイトの定義は分かりにくく、聞いたことはあるけど詳しく知らないという方が多いと思います。今まで重要視されてきた顧客ニーズに近いものなので、耳にしたことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。

そこで本記事では、ユーザーインサイトの定義や顕在ニーズと潜在ニーズの違い、さらに具体的な調べ方や活用事例などもご紹介します。マーケティング領域で結果が出せず困っている方やユーザーインサイトについて詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。

ユーザーインサイトとは?

資料を見せているビジネスマン

ユーザーインサイト(User Insight)とは「顧客の潜在意識、本音」を指すマーケティング用語です(単に「インサイト」と呼ぶこともあります)。直訳すると、ユーザーは利用者、インサイトは真相を見抜く力・洞察力を意味し、マーケティングではこれを「ユーザーのもつ本音」を指す用語として使っています。

ユーザーインサイト・顕在ニーズ・潜在ニーズの違いは?

ユーザーインサイトとニーズは混同されがちですが、ユーザーインサイトは無意識の欲求を指すのに対し、ニーズは意識できる欲求を指します。つまり、ニーズは比較的言葉にしやすいもので、ユーザーインサイトは本人も言葉にしにくいものと言えるでしょう。

さらにニーズにも「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」があります。顕在ニーズとは、ニーズのなかでもはっきりとしたもので「もっと味の濃いものが欲しい」「これの色違いが欲しい」などの欲求のことです。一方、潜在ニーズは、本人もはっきりと自覚していないもののインタビューを受けたりすることで顕在化するニーズのことです。例えば「いつも行くから」「選ぶのが面倒だから」と購入している際には「買い物で失敗したくないから」などの潜在ニーズが潜んでいる可能性があります。

具体例を挙げてみましょう。

A社のカップバニラアイスを購入した事例から、ニーズやユーザーインサイトを分析
顕在ニーズ・暑かったので、アイスを購入した ・数種類ある中で、好きなメーカーのものを購入した
潜在ニーズ・アイスの中でもバニラアイスが好きである ・A社のアイスは高価だが、おいしい印象がある
ユーザーインサイト・小さな頃にバータイプのアイスで手が汚れてから、カップを選ぶようになった ・量が多く安いものを好んで食べていた時期に太ってしまい、量が少なく高価なA社のものを選ぶようになった

潜在ニーズとユーザーインサイトの違いは、潜在ニーズはインタビューなどを通して気付くことがあるもの、ユーザーインサイトは言葉にするのが非常にむずかしい深層心理を指すものという点です。例えば「なぜ選ばなかったか」「比較した結果、なぜ入店しなかった」などの「なぜ」は言葉にしにくいものですが、こうした言語化しにくい部分に目を向けることで、より人々が本音で感じていることが分かると考えられています。

ユーザーインサイトを知るメリット

資料を見せているビジネスマン

ユーザーインサイト、つまり顧客の深層心理を読み解くことは、ビジネスにおいてさまざまなメリットがあります。商品開発やサービス提供の方針などに活用できるのはもちろん、販促活動やホームページ運営の仕方、競合他社との差別化にも大いに役立つでしょう。それでは、ユーザーインサイトを知るメリットについて、いくつかの項目に分けて解説します。

ユーザーインサイトを知るメリットは、以下の3つです。

  1. 商品開発やホームページ改善、広告などの指針となる
  2. 他社との差別化ができる
  3. 変化するユーザーのニーズに対応できる

それぞれ詳しく解説していきます。

商品開発やホームページ改善、広告などの指針となる

ユーザーインサイトを調べれば顧客の考えをより深く理解でき、商品開発やホームページ運営に関する指針として活用できます。これまでのニーズに基づいた施策では、おおまかな課題や改善点は見えてきても、それを施策に落とし込むまでには曖昧な部分も多くありました。また、ニーズに基づいた施策はかなり出尽くしてしまっていて、新しい施策を考えるのが難しくなっている企業も多くあります。

しかし、ユーザーインサイトに基づいた施策ならば、具体的かつ新しいものを考えられるでしょう。ユーザーインサイトは明確な答えがあるものではありませんが、それゆえに柔軟な発想でさまざまな仮説を立てられるものです。そのため、業種の枠にとらわれない考え方で新しい施策を考えることができるでしょう。

他社との差別化ができる

顧客も企業も把握しやすいニーズを追いかけて商品開発をすると他社との差別化が困難になってしまい、価格競争に巻き込まれる事態にもなりかねません。

しかし、ユーザーインサイトをもとに商品開発を進めれば他社との差別化がしやすくなります。ユーザーインサイトは顧客の感じている深層心理を読み解くものなので、明確に正解が出ないこともありますが、さまざまな手法でユーザーインサイトを読み解き、そのユーザーインサイトを突く商品を開発できれば、顧客は「そういえばこういうのが欲しかった」と感じて購入してくれる可能性が非常に高いです。

変化するユーザーのニーズに対応できる

商品を市場に投入すると、認知されるまでの「導入期」、顧客が拡大する「成長期」「成熟期」「飽和期」「衰退期」と段階ごとに顧客層やニーズが変化していきます。これを「プロダクトライフサイクル」と呼び、こうした顧客層やニーズの変化に対応することは商品を広めていくうえでかかせません。

また、イノベーターやアーリーアダプターと呼ばれる新しいものが好きな人がメインの顧客層となる「導入期」と、一般消費者層がメインとなる「成長期」の間には、大きな溝「キャズム」があるとされており、これを超えることを「キャズム超え」と呼びます。こうしたニーズの変化に対応したり、キャズム越えをしていくためにもユーザーインサイトは非常に有効です。

ユーザーインサイトの調査方法

資料を見せているビジネスマン

ユーザーインサイトの調査方法はいくつかありますが、現在ではネット上での調査が一般的となっています。運営しているホームページの利用者情報を調べたり、顧客に対してアンケートを取るなどして調べますが、調査方法によって難易度が異なるため注意が必要です。それではユーザーインサイトの具体的な調査方法について解説しましょう。

ユーザーインサイトの調査方法は、以下の3つです。

  1. 「MIERUCA HEATMAP」などのヒートマップ
  2. 「Google Analytics(ユニバーサルアナリティクス)」などのアクセス解析ツール
  3. ユーザーテストやアンケート

それぞれ詳しく解説していきます。

MIERUCA HEATMAP」などのヒートマップ

ヒートマップとは、ホームページ上でよく見られている場所を見える化するツールです。

アクセス解析はページごとの閲覧数などが分かるのに対して、ヒートマップはそれぞれのページの中でも具体的にどの部分に需要があるのか、どの部分が時間をかけて見られているかなどが明確になります。ヒートマップを用いてよく見られている部分が明確になったら「なぜそこがよく見られているのか」「読み飛ばされやすい部分に共通点はあるか」などを具体化します。

ほかのアクセス解析ツールなども組み合わせれば、詳細なユーザーインサイトの把握に繋がるでしょう。

Google Analytics(ユニバーサルアナリティクス)」などのアクセス解析ツール

アクセス解析ツールは、ページ毎の閲覧数や外部からの流入経路などを調べられるツールです。有名なものは「Google Analytics」で、無料でありながらさまざまな情報を収集できるツールとして多くのWebサイトで導入されています。

アクセス解析ツールでユーザーインサイトを調べる場合、ページごとの閲覧数(PV数)を確認するのはもちろん、ランディングページとして上位にくるページを調べたり、流入キーワードを確認することが有効です。有料ツールでは競合他社の流入キーワードなども調査することができ「どのようなキーワードで検索した人がどんなページを閲覧しているか」を知ることで、ユーザーインサイトを把握できるでしょう。

ユーザーテストやアンケート

Webマーケティングにおけるユーザーテストとは、主にWebサイト上で行うテストを指します。ユーザーにWebサイトを使用してもらいながら、使用感を評価してもらったり、想定通りの使い方になっているかなどを調べるのです。ユーザーテストにはユーザビリティテストやA/Bテスト、ベータテストなどがありますが、特に有名なのはA/Bテストでしょう。これは、同様のページを2種類作ってランダムに表示させ、どちらの方が反応が良いかを見るテストです。

こうしたユーザーテストやアンケートを用いることで、ユーザーが無意識のうちにどのような選択をし、どのような行動をするかが明確になります。この結果によってユーザーインサイトを把握することで、よりよいホームページ運営や販促活動ができるでしょう。

ユーザーインサイトを調査する際の注意点

女性がスマートフォンを操作している

上記の通り、しっかりと活用すればメリットの多いユーザーインサイトですが、調査する際にはいくつかの注意点があります。

ユーザーインサイトは、顧客の潜在意識にある需要を掘り起こすことになるため、調査は難易度が高く、調査方法によってはあまり適当でない結果になることもあります。ユーザーインサイトの調査方法を誤ってしまうと調査結果を活かした施策も効果のないものとなってしまい、調査時間と施策に費やした時間すべてが無駄になってしまいかねません。下記の注意点を意識しながら、できる限り正確なユーザーインサイトを把握できるように工夫してください。

ユーザーインサイトを調査する際の注意点は、以下の3つです。

  1. 調査対象や調査方法の設定に注意する
  2. 回答を誘導するような要素をできる限り排除する
  3. 100%の正解ではなく、複数の仮説を立てる

それぞれ詳しく解説していきます。

調査対象や調査方法の設定に注意

ユーザーインサイトに限らず、こうした調査を行う場合は対象者の設定が重要です。例えば、同様の調査でも、自社ビジネスに興味がある人や既存顧客に対して行うのと、まったく興味関心がない人に行うのでは結果が異なってきます。そのため、ユーザーインサイトをどのように活用したいのかを明確にしたうえで調査対象を慎重に設定することが大切です。

さらに、調査方法も結果に大きく影響します。ホームページ改善に活用するためにユーザーインサイトを知りたいという場合、ヒートマップで調べるのか、流入キーワードで調べるのか、チェック式のアンケートに回答してもらうのかで結果は異なります。複数の調査を掛け合わせることも視野に入れながら、柔軟に調査方法を選択しましょう。

回答を誘導するような要素をできる限り排除する

ユーザーインサイトを調べるためには、対象者が無意識に抱いている感情を探る必要があります。そのため、回答を誘導するような要素をできる限り排除しないと、対象者は質問の意図を汲んで回答をしてしまうため、対象者がはっきりと意識できる顕在ニーズを調べただけになってしまうことも多いです。

例えば「この製品の色違いが欲しいと感じることはありますか?」や「このメニューはおいしいと感じましたか?」といった質問は比較的回答が限定され、得られる情報はユーザーインサイトよりも顕在ニーズに近いものになってしまいます。「あなたがよく買う・買わない色はなんですか?」「このメニューの中でよく食べる・食べないものはありますか?」という質問にすると、回答の幅があり、回答からユーザーインサイトを調べやすくなります。

100%の正解ではなく、複数の仮説を立てる

ユーザーインサイトは人々の潜在意識(無意識)にある感情のため、さまざまな方法で調査したとしても100%の正解を導き出すことは難しいでしょう。そのため、絶対的な正解を出すのではなく「このような傾向があるということは、無意識にこのようなことを考えているのではないか」という仮説を複数立てたほうがユーザーインサイトを把握しやすいです。

また、同じ調査結果でも人それぞれ解釈は異なります。ユーザーインサイトを調べる際には、こうした「あいまいさ」を理解したうえで、さまざまな情報を多角的に捉えて分析し、複数の仮説を立て、それぞれの仮説をお互いに尊重し合いながら活用する姿勢が重要です。

ユーザーインサイトの活用事例

社内でパソコンを操作している笑顔の女性

顕在ニーズと違い、ユーザーインサイトは把握するのが難しいため、うまく活用できるか心配という方も多いでしょう。

しかし、根拠を持って仮説を立ててそれを活用することができれば、商品開発や販促活動の改善におおいに役立ちます。また、場合によっては顕在ニーズを活かした施策よりもヒットする可能性もあります。ユーザーインサイトは正解のないものだからこそ他社に真似できない発想ができ、それが顧客の心を掴む商品・広告に繋がることもあるでしょう。

それでは、実際にユーザーインサイトを活用した事例をいくつかご紹介します。

日清食品「カップヌードル リッチ」

カップヌードルやチキンラーメンをはじめとしたインスタント麺で有名な日清食品では、ユーザーインサイトをもとに開発した「カップヌードル リッチ」で成功を納めた事例があります。

カップヌードルは若者を中心に人気ですが、60代以上のユーザー層があまりいない点に悩んでいました。「健康に気を遣いたい」というシニア層の顕在ニーズをふまえて「減塩」や「カロリーオフ」をコンセプトとした商品を打ち出すもののあまり結果は出ず、シニア層のユーザー獲得に苦慮します。

そこで「カップヌードル リッチ」のメインターゲットでもある65歳前後の方(アクティブシニア層)についてさらに調査したところ「健康志向ではあるものの、フカヒレやすっぽんなどの高級食品も食しており、購買意欲が非常に高い」ことが分かりました。この調査結果を受けて「健康志向は前提でありながら、過度に健康志向なものでなく、質の高いものを求めているのではないか」という仮説を立て、その仮説から「カップヌードル リッチ」を開発します。

この製品は、ターゲットのアクティブシニア層を中心にヒットし、他製品よりも高価な価格設定ながら、発売7ヶ月で累計販売数1400万食を記録しました。

参照元:【特集】「中高年に大ヒット!カップヌードル リッチ開発秘話(1)」日清食品マーケティング部ブランドマネージャーに聞く!<直撃Q&A>

カリフォルニア牛乳協会「got milk?キャンペーン」

「got milk?キャンペーン」とは、1990年代にアメリカで行われた牛乳販促キャンペーンで、ユーザーインサイトが注目されるようになったきっかけといわれるものです。

当時カリフォルニア牛乳協会は、牛乳の販売不振に直面していました。協会は「子どもの飲み物」「脂肪分が多い」といった牛乳に対するネガティブなイメージを払拭しようとさまざまな施策を打ち出しますが、なかなか効果が出ません。そこで牛乳を購入する人々について調査を行ったところ「クッキーを食べる際に一緒に飲んでいる方が多い」ということが分かりました。この結果から「クッキーなど口が渇きやすい食品と一緒に飲みたいと考える方は多いのでは」と仮説を立て、クッキー売り場に「got milk?(ミルクはある?)」というポスターを掲示したところ、見事に牛乳を購入する人が増えたのです。

この事例から「なんとなくこの食べ物にはこの飲み物、という一般的なイメージがある」ということや「今は選ばれていない食品でも、多くの人が食している食品(今回はクッキー)とリンクさせることで需要を創出できる」ということが分かります。

参照元:got milk? home page

まとめ

デスクの上でパソコンを操作している複数のビジネスマン

本記事では、ユーザーインサイトについての概要や調べ方、具体的な活用事例などを解説しました。

ユーザーインサイトを調べるのは難易度が高い印象がありますが、調査結果からさまざまな仮説を立て、施策を考えるのは決して難しいことではありません。むしろ、正解がないからこそ仮説の幅が広く、自由に想像できるというメリットもあります。調査結果を分析するなかで思わぬ仮説が思いつくこともあり、そこから考えた施策がヒットした際の達成感は計り知れないものがあるでしょう。また、ユーザーインサイトに基づいた施策は顧客にも「自分の奥底にあった感情に気付くきっかけ」を与えることになり、企業側だけでなく顧客にとってもメリットがあります。

皆さんもこの記事を参考に、ユーザーインサイトを活用してみてください。

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