病院を経営をするうえで、ネットや街頭広告などでの集患・集客は切っても切り離せない存在となっています。各種広告やSEO対策・MEO対策を充実させることで他院と差別化を図り、実際に大きな集客効果を上げた病院も少なくありません。
しかし、ホームページはあるものの更新が滞っているという病院や、SEO・MEOという単語自体は知っていても、具体的な対策はしていない病院も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、病院経営者の方に向けて効果的な集患・集客方法を解説します。現在は既存患者で十分に経営が成り立っている病院でも、集客を怠り続ければ患者数が減少したり既存患者が他院に流れる可能性が高まります。長期的に安定した病院経営をしていくために、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
集客・集患ポイント① | 現状分析:集客・集患できない原因を知ろう

病院の集客・集患やマーケティングを強化する際にまず行うべきなのは、課題を詳細に洗い出すことです。なぜ集客がうまくいっていないかが明確でないと、今後どのような変化をつけて集客するのか、そのためにまず何をすべきかが分からず、結局今までの方法を惰性で続けるだけになりがちなので、注意しましょう。
集客・集患やマーケティングがうまくできていない原因としては、「人員不足で、集客・集患に専念できる人がいない」「コストがかけられない」「既存患者である程度経営が成り立っているために、集客を改善しようという意識が低い」などが挙げられます。このほかにもさまざまな課題が考えられるため、まずは一つひとつ課題を明確にしていく時間を設けましょう。
課題の洗い出し方、細分化の方法
集客・集患やマーケティングの課題を洗い出すためには、まず「なぜ集客・集患やマーケティング方法を改善しなくてはならないのか」「集客・集患やマーケティング方法を見直すとどうなるのか」を共有して、関係者全体で意識共有をする必要があります。そして病院内のスタッフから広く意見を募ることで、積極的な意見交換ができるようになり、課題の洗い出しもスムーズに行うことができるでしょう。
課題が複数見つかった場合は、細分化を行う必要があります。課題を大まかにしか把握できていなかったり、あまりに大量の課題を一挙に解決しようとすると、その後の改善策があいまいになったり、漫然なものになったりしがちです。そのため、極力多くの課題を出したうえで、それらを細分化することで「具体的にどのような改善策を講じるか」が考えやすくなります。
集客・集患のポイント② | 他院との差別化を図ろう

現状分析を行って「集客・集患できない原因」が明確になったら、具体的にどのような改善策を講じるかを考えます。ここで重要なのは、課題改善だけでなく「差別化」も考えることです。
課題解決だけを考えてしまうと、多くの病院がやっているオーソドックスな集客・集患方法に帰結しやすく、他院と差別化ができていないために効果が見えにくくなってしまいます。そのため、どのように課題解決をするかを考えた後に、その解決策をどのようにアレンジして差別化を図るかを考えていきましょう。
差別化を図るのは非常に難しく、院内スタッフだけではアイデアが出にくいことも多いです。以下を参考にしながら良い差別化方法が思いつけば、コスト抑制や効率化など思わぬメリットに繋がることもあるため、時間をかけてじっくりと考えてみてください。
集客・集患において差別化を図る方法
病院の集客・集患やマーケティングで差別化を図る方法として、まだ病院関係者が積極的に行っていない方法を用いるといったものがあります。
例えば、MEO対策はその代表例で、2022年現在は少しずつ認知度が高まっていますが、現段階で対策に力を入れれば、他院と大きな差がつけられるでしょう。MEO対策とはGoogleマップでの検索において上位表示されるために行う対策のことで、昨今はGoogleマップの検索で病院を探したり、口コミを見て病院を比較する人が増えているため、集客・集患方法としてとても重要なものと考えている人が増えています。
また、他業界の集客やマーケティング方法をアレンジして活用するのも差別化を図る方法のひとつです。飲食業界・アパレル業界・小売業界は特に集客においてさまざまなノウハウを持っており、それらの多くはインターネットでも情報を得ることができます。こうした他業界のノウハウを盗むのも、差別化を考えるうえで行き詰まった際のブレイクスルーとして有効でしょう。
集客・集患の方法① | オフライン広告

病院の集客・集患やマーケティング方法として一般的なのは「オフライン広告」です。この記事をご覧の方の中にも、自院の広告を出したことがあるという方や駅などで病院の広告を見たことがあるという方は非常に多いでしょう。オフライン広告は、多くの人に訴求できるという点や特定地域に絞って訴求できるという点が魅力です。
「オフライン広告」にはさまざまなものがあり、種類によって特徴やメリット・デメリットも異なるため、病院ごとに適したものを選ぶ必要があります。かかるコストも大きく異なるために、予算に応じて選択することが重要です。
以下でオフライン広告の種類ごとに特徴を解説しますので、自院の抱えている課題や目指している集客形態をふまえて、最適なものを選択できるようにしましょう。
駅や街頭のポスター
駅や街頭のポスターは、その地域に住んでいる方や通勤・通学で日常的に往来する方に対して、広く訴求できるオフライン広告です。
性別・年齢層・年収・趣味趣向を問わずに訴求できるため、その地域全体での認知度を高めたい場合に適している集客・集患方法といえます。また、動画広告と比べて一目見たときの情報量が多く、あまり興味がなかった人にも必要最低限の情報は伝えられるという点もメリットです。
テレビCM
テレビCMは、地域問わず非常に幅広いターゲットに訴求できるオフライン広告です。
番組ごとに視聴者属性(年齢・性別・趣味趣向など)にはある程度の偏りがあるものの、街頭ポスターや雑誌広告に比べるとかなり多くの人に訴求することができます。また、動画広告のため情報量が多く、YouTubeをはじめとしたネット広告と比べて視聴スキップをされる可能性が低いのも魅力です。
雑誌・新聞広告
雑誌や新聞などの紙媒体広告は、特定の層に訴求するのに適したオフライン広告です。
媒体ごとに年齢層や趣味趣向が異なるため、得意とする分野が明確な病院(整形外科やニキビなど思春期の肌トラブルに強い皮膚科など)は特に適しているでしょう。また、地方紙は読者の在住地域が絞られるため、地域に根ざした医療を大切にしている病院にもおすすめできます。
ラジオCM
ラジオCMは、読み飛ばしやスキップがされにくいオフライン広告です。
現在のラジオは視聴中にスキップすることが難しく、生放送を聴く方も比較的多いため、広告を聴いてもらいやすい集客・集患方法といえます。病院のラジオCMを取り扱っているのが多いのは「ローカル局」で、所在地域のローカル局にCMを出す病院が比較的多い傾向があるのです。
チラシ(街頭での配布やポスティング)
チラシの街頭配布やポスティングは、メディア広告に比べて低コストで行える集客・集患方法です。訴求地域も限定できるため、効率よく認知度を向上するのに適しています。
ただし、テレビCMや雑誌・新聞広告に比べると情報量が少なくなってしまうことも多く、情報量を増やそうとすると雑然とした印象になりがちなため、デザインは専門のデザイナーに依頼するのがおすすめです。
集客・集患の方法② | オンライン広告

オンライン広告とは、主にインターネットを用いて配信する広告のことです。使い方次第で非常に幅広い層に訴求したり、ターゲットを絞って訴求したりできるため、柔軟な集客・集患が可能な方法といえます。また、ターゲットを絞った場合はコストも低く抑えられるため、予算がない病院でも使用しやすいでしょう。
選択肢が幅広く、運用方法も複雑に感じられるものが多いですが、昨今は広告を出稿する側も使いやすいものが増えており、オンライン広告の作成や運用をサポートする専門業者も増えています。
以下でオンライン広告について知識をつけながら、もし自院で運用するのが難しいと感じた場合は運用専門の会社に依頼することも検討してみましょう。
リスティング広告
リスティング広告とは「検索連動型広告」を指し、ユーザーの検索履歴や閲覧履歴をもとに、その広告に興味があると考えられるユーザーのみに絞って表示させる広告のことです。
GoogleやYahoo!の検索結果上部に表示されるもので、即効性やコストパフォーマンスを重視する方におすすめできるオンライン広告といえます。
SNS広告
SNS広告は、YouTube・Twitter・LINE・InstagramなどのSNS上で配信する広告です。通常の投稿内容やSNS検索結果の内容と同じ形で表示されるため、見てもらいやすいというメリットがあります。
リスティング広告は「この病院を探している」という人に表示されるためコンバージョン率が高くなりやすいですが、SNS広告の場合は病院を探しているタイミングでなくても表示されるため、コンバージョン率はリスティング広告ほど高くなりにくい傾向です。
ディスプレイ広告
ディスプレイ広告とは、Webサイト・メディアサイト・ブログなどに表示される広告です。表示させるユーザーを指定するリターゲティング配信・インタレスト配信・配信サイトを選択するプレースメント配信などさまざまなものがあり、リスティング広告と似た特性を持つオンライン広告といえます。
画像だけでなく動画タイプやさまざまなサイズを選択できるため、情報量を重視したい病院におすすめです。
アフィリエイト広告
アフィリエイト広告とは「成果報酬型広告」のことで、アフィリエイト業者が運営するブログやメディアサイトに広告を掲載してもらい、その広告から成約に繋がったら報酬を支払うタイプの広告です。
成果報酬型のため費用対効果が高いのが魅力ですが、広告掲載主(アフィリエイター)は広告業者(ASP)のサイトから扱う広告を選んで掲載するため、条件によっては自院の広告を選んでもらえず、掲載してもらえる媒体が極端に少ない場合もあります。
病院が集客・集患をする際の注意点

医療関係の広告には「医療広告ガイドライン」が存在し、これに違反しているものは行政処分の対象となるため、広告作成や運用には注意が必要です。規制の対象者には、広告の出稿主や作成主はもちろん、掲載したサイトの運営主なども含まれることが明記されています。
厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」では、以下のように記載されています。
広告媒体との関係 広告依頼者から依頼を受けて、広告を企画・制作する広告代理店や広告を掲載する新聞、雑誌、テレビ、出版等の業務に携わる者及びアフィリエイターは、依頼を受けて広告依頼者の責任により作成又は作成された広告を掲載、放送等するに当たっては、当該広告の内容が虚偽誇大なもの等、法や本指針に違反する内容となっていないか十分留意する必要があり、違反等があった場合には、広告依頼者とともに法や本指針による指導等の対象となり得るものである。
上記の通り、自院関係者以外のさまざまな方が指導対象となる恐れがあります。そのため、以下の注意ポイントを意識しながら、ガイドラインに違反せず、見た人に有益となるような広告が作成できるように意識していきましょう。
なお、医療広告ガイドラインで禁止されている広告は、以下の8種類です。
- 広告が可能とされていない事項の広告
- 内容が虚偽にわたる広告(虚偽広告)
- 他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告(比較優良広告)
- 誇大な広告(誇大広告)
- 患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談
- 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等
- 公序良俗に反する内容の広告
- その他 (ア)品位を損ねる内容の広告 (イ)他法令又は他法令に関する広告ガイドラインで禁止される内容の広告
今回は、1.〜5.に絞って解説しますので、これから広告作成を考えている方はぜひ参考にしてください。
広告に記載可能な事項を把握する
医療広告に掲載することができない内容について、ガイドラインで明確に定義されています。
例えば、専門外来についての内容や死亡率・術後生存率等についての内容、未承認医薬品に関する記載はガイドライン上NGです。専門外来については、糖尿病や花粉症など特定の治療や検査を外来患者に行えるという内容は掲載可能ですが、広告可能な診療科名と患者に誤解を与える内容はNGとなっています。
虚偽の内容を記載しない
「絶対に安全」という内容や、加工・修正した画像を用いた広告は「虚偽広告」にあたり、処罰の対象になります。処置後の経過観察が必要なのにも関わらず「1日ですべての治療が終わります」といった内容を記載するのもNGで虚偽広告扱いとなるため、注意しましょう。
「ほかの病院よりも優れている」という表現はしない
「県内トップの病院」や「日本一の実績がある」といった、ほかの病院と比較して自院がとても優れているという表現の広告(比較有料広告)はNGです。
医療広告ガイドラインには、以下の具体例が示されています。
- 広告規制の対象範囲:暗示的又は間接的な表現の扱い、病院等のウェブサイトのURLやEメールアドレス等によるもの
【具体例】
nolhospi@xxx.or.jp 「nolhospi」の文字は「No.1Hospital」を連想させ、日本一の病院である旨を暗示している。「日本一」等は比較優良広告に該当するものであり、認められない。
- 禁止される広告について:他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告(比較優良広告)
【具体例】
- 肝臓がんの治療では、日本有数の実績を有する病院です
- 当院は県内一の医師数を誇ります
- 本グループは全国に展開し、最高の医療を広く国民に提供しております
- 芸能プロダクションと提携しています
- 著名人も○○医師を推薦しています
- 著名人も当院で治療を受けております
引用元:厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」
上記のガイドラインを見ると「日本有数」「県内一」「最高の医療」のような表現のほか、URLやEメールアドレスに「日本一」を暗示させる表現を用いるのもNGと明記されています。このように「自院は他院よりも優れている」という表現を広告に用いることはできません。
極端に誇張した内容を用いて広告を作成しない
活動実態のない団体名を使って「〇〇学会認定病院・医師」という表現をしたり、根拠なく「安全な手術」という文言を使った場合は「誇大広告」に該当し、ガイドライン違反となってしまいます。
また、病院を開設するにあたって必須である都道府県の許可を「知事公認の病院」などと表現したりするのも誇大広告に該当します。
患者の体験談や口コミを使った広告作成はしない
患者ごとに感じることや経過状況は異なるため、誤解を与える可能性がある広告はNGです。そのため、患者の体験談や口コミは、広告に使用してはいけません。
なお、口コミサイトは誘因性がないことから広告に該当しませんが、もし病院側に便宜を図って良い口コミを掲載していた場合には処分対象になる恐れがあります。
まとめ

病院の集患・集客方法は多様化しています。新しい方法を取り入れながら効果的にマーケティングをして、良い経営状態を維持している病院がある一方で、多様化した方法に対応しきれず、今までの方法を続けていた結果、集客が上手くいかなくなってしまった病院もあり、今後そうした病院は増えていくことが予想されるでしょう。
また、美容整形などのニーズが増加して競争が激化している分野もありますが、美容医療に関する相談件数も増加しており、医療業界全体としてガイドラインに遵守した広告作成・運用が求められます。
この記事をご覧の皆様も、医療ガイドラインを今一度ご確認いただき、患者様にとって有益な広告が配信できるように努めていきましょう。