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【2023年度版】医療広告ガイドラインを徹底解説!違反のリスクと注意点
2023年06月10日更新日:2024年04月19日
平成30年に医療法が改正された際に、病院や診療所などのウェブサイトも広告規制の対象になりました。リスティング広告やバナー広告などの有料で出稿する広告だけではなく、ウェブサイトも対象になった点に注意が必要です。ウェブサイトに載せている情報を見直す必要があるかもしれません。
今回は、医療法改正に伴って改定された、医療広告ガイドラインの概要や広告の対象範囲、広告可能事項や禁止事項についてご紹介します。
医療広告ガイドラインの概要
医療法の改正により、医療広告ガイドラインも大きく改定されました。従来の医療広告である看板・チラシ・テレビCMなどだけではなく、ウェブサイトにも広告規制が設けられることになったのです。
まずは、医療広告ガイドラインの概要をご説明します。
看板・チラシ・テレビCMなどの医療広告は従来どおり規制される
看板・チラシ・テレビCMなどの医療広告については、昭和23年に公布された「医療法」にて広告可能事項が定められており、広告可能事項以外の内容についての掲載は認められていませんでした。今回の改正でも、その点に変更はありません。
医療機関のウェブサイトにも広告可能事項の限定が適用された
これまで、医療機関のウェブサイトについては「医療機関のホームページの内容の適切なあり方に関する指針(医療機関ホームページガイドライン)」について自主的な取り組みを期待するのみで、医療法による詳しい広告規制はありませんでした。
しかし、美容医療に対する相談件数の増加に伴い、医療機関のウェブサイトも他の広告媒体と同様に規制の対象となりました。医療広告ガイドラインに基づき、虚偽又は誇大広告等を表示した場合は、是正命令や罰則等の対象になります。
広告可能事項の限定が解除される
一定の条件を満たしていれば、禁止事項に違反しない限り、広告可能事項の限定は解除されます。ウェブサイトにのみ広告可能事項の限定解除の条件が定められている理由は、ウェブサイトが詳細な診療内容など、患者が求める情報の円滑な提供に寄与していると考えられるためです。
医療広告ガイドラインの対象範囲 (対象媒体)
医療広告ガイドラインには、医療広告に該当する媒体が規定されています。それぞれの広告媒体によって広告規制の内容が変わるので、どの広告媒体に該当するか事前に確認することが重要です。
医療広告に該当する媒体
まずは、医療広告に該当する媒体です。昭和23年に交付された「医療法」をもとにしているため、現在ではあまり使われない媒体も含まれますが、新しいものとして「情報処理の用に供する機器によるもの(Eメール・インターネット上の広告等)」が含まれています。
また、出稿に費用がかかる広告(リスティング広告・バナー広告・看板やチラシなど)だけではなく、ウェブサイトに記載している内容もガイドラインの対象となることにも留意が必要でしょう。
医療広告ガイドライン(厚生労働省) において、広告の規制対象となる媒体の具体例とは、以下のとおりです。
- チラシ、パンフレットその他これらに類似する物によるもの(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)
- ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオンサイン、アドバルーンその他これらに類似する物によるもの
- 新聞、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備による放送を含む。)、映写又は電光によるもの
- 情報処理の用に供する機器によるもの(Eメール、インターネット上の広告等)
- 不特定多数の者への説明会、相談会、キャッチセールス等において使用するスライド、ビデオ 又は口頭で行われる演述によるもの
医療広告ガイドラインにおいては「広告」という言葉の意味を広く捉える必要があるでしょう。
医療広告とは見なされないもの
医療広告ガイドラインにおいて、医療広告として見なされないものは、以下のとおりです。
- 学術論文、学術発表等
- 新聞や雑誌等での記事
- 患者等が自ら掲載する体験談、手記等 (医療機関の依頼に基づいていたり、謝礼を受け取っていたりする場合は除く)
- 院内掲示、院内で配布するパンフレット等
- 医療機関の職員募集に関する広告
医療法における広告可能事項とは?
医療広告ガイドラインの医療法における広告可能事項について、以下の記載があります。
- 医療広告として広告可能な事項は、患者等の治療選択等に資する情報であることを前提としている。また、医療の内容等については、客観的な評価が可能であり、かつ事後の検証が可能な事項に限られる。
患者が医院や治療内容を選択する際に、選択の手助けとなるような情報の広告は、掲載してもよいということです。
医療広告ガイドラインに記載されている広告可能な事項の具体的な内容は、以下のとおりです。
- 医師又は歯科医師である旨
- 診療科名
- 病院または診療所の名称、電話番号、所在の場所、管理者の氏名
- 診療日、診療時間、予約による診療の実施の有無
- 法令の規定に基づき一定の医療を担うものとして指定を受けた病院であること(例:労災指定病院)
- 地域医療連携推進法人の参加病院等である場合は、その旨
- 入院設備の有無、医師や従業員の数、その他医療機関の設備や人員配置に関する項目
- 医療従事者の氏名、年齢、性別、役職及び略歴、厚生労働大臣が定めた医師等の専門性に関する資格名
- 医療相談、医療安全、個人情報の適正な取扱いを確保するための措置その他病院等の管理又は運営に関する事項
- 紹介可能な他の医療機関等の名称等、他の医療機関との連携に関する事項
- ウェブサイトのアドレス、入院診療計画等の医療に関する情報提供など医療に関する情報提供についての事項
- 病院等において提供される医療の内容に関する事項(自由診療については保険適用外であることと標準的な費用がわかるように記載することが必要。往診の実施や在宅医療の実施についても記載可能。成功率、治癒率などの記載は不可。)
- 平均入院日数、平均患者数等に関する事項
- 健康診断の実施に関する事項
- 保健指導、健康相談の実施に関する事項
- 予防接種の実施に関する事項
- 治験薬の治験に関する事項
- 医療機関と同一敷地内にある介護保険サービス事業者の名称やサービス内容
- 費用の支払方法、入院患者に対するサービス内容、対応言語、駐車場設備、送迎サービス、携帯電話の使用、通訳の配置などの事項
- 医療機関の開設者に関する事項
- 公認会計士等の外部監査を受けている場合は、その旨
- 公益財団法人日本医療機能評価機構が行う医療機能評価の結果
- 産科医療補償制度加入機関である場合は、その旨
- ISOの認証を取得している場合はその旨等
- Joint Commission Internationalが行う認定を取得している場合はその旨
- その他都道府県知事が定めた事項
ただし、これらの広告から移動する先のウェブサイトについては、広告可能事項の限定を受けないウェブサイトの条件を満たしていれば、自由に情報を載せることができます。もちろん、後述する禁止事項に該当したものは認められないので、注意してください。
医療機関のウェブサイトにおいて禁止されていること
医療広告ガイドラインにおいて一定の条件を満たせば、医療機関のウェブサイトは広告可能事項の限定に準じた広告でなくても掲載できるようになります。
しかし、広告可能事項の規制とは別に禁止事項が設けられているため注意が必要です。禁止事項は、以下のとおりです。
虚偽広告や客観的事実を証明できない情報の禁止
患者に事実とは異なる情報を与えるような「虚偽広告」は禁止されています。また、事実とは異なるよりよい加工・修正を施した術前術後の写真などを掲載することも、虚偽広告に含まれます。
虚偽広告にあたる具体例は、以下のとおりです。
- 「絶対安全な手術です!」
- 「どんなに難しい症例でも必ず成功します」→ 絶対安全な手術等は、医学上あり得ないので虚偽広告として扱う
- 厚生労働省の認可した○○専門医 → 専門医の資格認定は学会が実施するものであり、厚生労働省が認可した資格ではない
- 加工・修正した術前術後の写真等の掲載 → あたかも効果があるかのように見せるため、加工・修正した術前術後の写真等については「虚偽広告」として取り扱う
- 「一日で全ての治療が終了します」(治療後の定期的な処置等が必要な場合) → 治療後の定期的な処置等が必要であるにもかかわらず、全ての治療が一日で終了するといった内容の表現を掲載している場合には、内容が虚偽広告として取り扱う
- 「○%の満足度」(根拠・調査方法の提示がないもの)→ データの根拠(具体的な調査の方法等)を明確にせず、データの結果と考えられるもののみを示すものについては、虚偽広告として取り扱う
- 「当院は、○○研究所を併設しています」(研究の実態がないもの)→ 研究している実態がない場合には、虚偽広告として取り扱う
他の病院や診療所と比較して優良であることを示す広告の禁止
比較優良広告とは、他の病院と比較して自らの医療機関が優れているということを広告するものであり、患者が医療機関に対して間違った認識を抱くおそれがあるとして広告掲載を認められていません。
具体例は、以下のとおりです。
- 「肝臓がんの治療では、日本有数の実績を有する病院です。」
- 「当院は県内一の医師数を誇ります。」
- 「本グループは全国に展開し、最高の医療を広く国民に提供しております。」
- 「芸能プロダクションと提携しています」
- 「著名人も○○医師を推薦しています」
- 「著名人も当院で治療を受けております。」
誇大広告の禁止
医療機関の施設や規模、提供する医療の内容について、事実を不当に誇張して広告することで、患者に誤った認識を与えることは禁止されています。患者が広告内容から想像するであろう「印象」や「期待感」と事実の間に相違があると常識的に判断できる内容であれば、誇大広告であることの証明になります。
誇大広告の具体例は、以下のとおりです。
- 「知事の許可を取得した病院です!」(「許可」を強調表示する事例) → 病院が都道府県知事の許可を得て開設することは、法における義務であり当然のことであるが、知事の許可を得たことをことさらに強調して広告し、あたかも特別な許可を得た病院であるかの誤認を与える場合には、誇大広告として扱う
- 「医師数○名(○年○月現在)」→ 示された年月の時点では、常勤換算で○名であることが事実であったが、その後の状況の変化により、医師数が大きく減少した場合には、誇大広告として取り扱う
公序良俗に反する内容の広告の禁止
医療法では「公の秩序又は善良の風俗に反する内容の広告をしないこと」と規定されています。わいせつ、残虐な画像や映像、もしくは差別表現等を使用した広告などは、公序良俗に反する内容の広告として禁止されているのです。
料金の安さや、早期の受診をあおる広告の禁止
「衝撃の〇〇円!」と安さを過剰にアピールする表現や「〇月〇日までなら30%オフ!」のように早く受診するようにあおる表現も、医療広告ガイドラインで禁止されています。患者を不当に誘引し、必要のない受診をさせる場合や、他院と正常に比較することを難しくさせる場合があるためです。
また「日本一安い!」という表現は、比較優良広告にも該当するので注意しましょう。
科学的な根拠が乏しく不安を過度にあおる広告の禁止
科学的な根拠が乏しいにも関わらず、以下のような表現を広告に用いることもガイドラインで禁止されています。
- 「この病気には、この手術が最も効果的です」
- 「こうような症状がある方は命に関わる状態なのですぐに受診してください」
- 「〇〇手術は効果がありません。当院の〇〇手術がおすすめです」
上記のような科学的根拠が乏しい内容を記載して、患者の不安をあおるのもやめましょう。
広告可能事項以外の広告の禁止
医療法において「次に掲げる事項以外の広告がされても医療を受ける者による医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合として厚生労働省令で定める場合を除いては、 次に掲げる事項以外の広告をしてはならない」と規定されています。
医療広告は患者の治療を選択する際に必要な情報であるとの理由で、広告可能事項とされる場合を除いては、広告可能事項以外の掲載が禁じられているのです。
患者等の主観に基づく、治療内容または治療効果に関する体験談の禁止
治療内容や治療効果に関する感想や体験談の掲載は、個々の患者の状況により内容は異なるため、患者に対して誤った認識を与えるおそれがないよう禁止されています。
ただし、治療内容や治療効果に言及しないものであれば、広告可能事項として認められます。また、患者の口コミや体験談のなかで、医療機関から依頼されていない内容で記載するものは医療機関の広告とは判断されません。そのため、ウェブサイトに載せることも可能です。
治療前後写真の詳しい説明がない掲載の禁止
治療の結果は個々の患者により異なり、ビフォア・アフター写真は患者に誤った認識を植え付けるおそれがあります。したがって、合理的な根拠がないまま効果・効能を主張する広告は掲載することが認められていません。
ただし、ビフォア・アフター写真や治療前・治療後のイラストの掲載については、通常必要とされる治療内容や治療にかかる費用、治療することで生じるリスク、副作用等に関することについて、詳細な説明を付けた場合に限って認められています。
詳細な情報の掲載場所は患者にとってわかりやすい場所に配置し、リンクを貼った先のページに記載する、極端に小さく表示するなどを行ってはいけません。
医療法の広告可能事項の限定解除となるウェブサイトの条件
医療法の広告可能事項の限定が解除となるウェブサイトの条件は、以下のとおりです。
- 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
- 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
- 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
- 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
限定解除とは、患者が求める情報が適切に提供できるように、要件を満たせば医療広告ガイドラインによる制限が解除されることを指します。
広告規制違反してしまうと
厚生労働省は「医療機関ネットパトロール」に委託して、医療に関わるウェブサイトを監視しています。一般からの情報提供も受け付けており、広告可能事項の規制違反の疑いがある場合は「任意の調査」「報告命令」「立入検査」などの措置がとられるのです。
万が一、通知が届いても、迅速に適切な内容に修正を行えば問題ありません。改善状況確認が1か月後に行われるため、なるべく早く対処しましょう。
病院または診療所が広告の中止や是正の命令に従わない場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が課されます。悪質な場合は病院や診療所の開設許可を取り消される対象となり、開設者に対して施設の閉鎖が命じられる可能性もあるでしょう。
医療広告ガイドラインの遵守に向けた対策
医療広告ガイドラインの遵守に向けて、医院でしっかりと対策を講じる必要があります。決裁権をもつ人がなんとなく把握している状態ではなく、広告作成に関わる全員がガイドラインを遵守する意識をもちましょう。
以下、医療広告ガイドラインの遵守に向けた対策を2つご紹介します。
社内教育を徹底する
まず大切なのは、社内教育の徹底です。
資料を共有するだけでなく、広告作成に関わる全員でガイドラインの要点を読み合わせる、事例を共有するなどを行いましょう。医療広告ガイドラインを読んだだけだとイメージしにくい部分もあるため、具体的な違反例を確認するとよいでしょう。
自社で行うのが難しければ、セミナーの受講を検討してください。2022年に医療広告ガイドラインが改正されたことで、関連団体がセミナーを開催しています。医療広告ガイドラインは、専門的な知識をもった人でないと理解しにくい部分もあるため、不安があればセミナーを受講しましょう。
社内の広告制作プロセスや承認体制を見直す
どれだけ社員教育をしても、無意識のうちに医療広告ガイドラインを違反してしまうこともあります。チェックリストを作成して広告制作プロセスを見直すことで、意図せずガイドラインに違反するミスをできる限り減らせるでしょう。チェックリストは、よくある違反事例を参考して作成するとよいでしょう。
また、承認体制を見直すのも効果的です。どれだけミスが発生しても、承認プロセスのどこかでストップがかけられれば最悪の事態は防げます。複数人で広告チェックをするのはもちろん、医療広告に詳しい専門家に見てもらい、万が一、ミスがあった際には、公開前に止められるような体制を作りましょう。
SNS管理体制を見直す
昨今多いのが、SNSを運用するなかでのガイドライン違反です。医療広告ガイドラインにおいて、SNSが規制対象であると明言はされていないものの、対象になりうると考えて対策する必要があります。「TwitterやInstagramなどで集患しよう」と、深く考えずに投稿を続けているとガイドラインを違反してしまう可能性があります。
SNS投稿に関しては、文章をGoogleスプレッドシート等で管理して複数人でチェックするなど、投稿前のチェック体制を作ることが大切です。SNSの操作に慣れているスタッフ数人だけで運用するのではなく、さまざまな人が投稿内容を事前にチェックし、ガイドライン違反がないか確認しましょう。
まとめ
医療法の改正によって、医療機関のウェブサイトについても広告規制が設けられることになりました。従来の広告情報だけではなく、ウェブサイトに載せる情報にも注意が必要です。広告規制に違反してしまい、違反を放置し続けると病院や診療所を閉鎖せざるを得ない状況に追い込まれる可能性もあります。
広告可能事項や広告可能事項解除の条件、掲載が禁止されている内容等をしっかりと把握して、ウェブサイトに適切な情報を掲載できるようにしましょう。