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CX(顧客体験)とは?CX向上のメリットやポイント、事例をご紹介!
2023年09月09日更新日:2024年04月19日
今回は、企業のマーケティング担当者に向けて、CX(顧客体験)が重要視されている理由や、CXを向上させるポイントなどを解説します。
事業を成長させるためには、顧客体験・ロイヤルティの向上が必須です。ぜひ本記事を参考に、CX向上に取り組みましょう。
CX(顧客体験)とは?
CX=Customer Experience(カスタマーエクスペリエンス)とは、商品・サービスの物理的価値(価格・機能)だけでなく、購入するまでの過程や商品・サービスを通して得られる感情・経験の価値も含めた一連の概念です。
例えば、商品を購入する際の以下の流れすべてがCXとなります。
- 好きなYouTuberが商品を紹介していて認知する
- GoogleやSNSで商品の口コミ・評判・価格を調査する
- 商品を販売している公式サイトを訪れる
- 申し込みフォームを入力して商品を購入する
- 商品を使用する
- 商品に関する疑問点を問い合わせる
- 商品が気に入ったので友人に紹介する
顧客体験とよく似た言葉に「顧客満足度」があります。顧客体験は購入前~購入後すべての体験のことを指しますが、顧客満足度は購入後の満足度を指す言葉です。
顧客体験の分類
顧客体験は、以下の5つの経験価値に分類されます。
- Sense(感覚的価値)
- Feel(情緒的価値)
- Think(創造的・知的価値)
- Act(行動・ライフスタイルに関わる価値)
- Relate(準拠集団への帰属価値・社会的経験価値)
それぞれ解説します。
Sense(感覚的価値)
視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚の五感によって得る価値のことです。例えば「心安らぐ音楽」「おいしい料理」「手触りのよさ」などが該当します。
Feel(情緒的価値)
丁寧な接待対応など、顧客の感情に働きかけたサービスによって生まれる価値のことです。例えば、サービスの利用方法がわからないときに、適切なタイミングで適切な回答を得られた感動が該当します。
Think(創造的・知的価値)
顧客の知的好奇心や創造性などに働きかける経験価値のことです。例えば、新しい商品を販売する際に「最新」「業界初」と宣伝することで、顧客は「これまでにない特別なものを利用できる」という感覚をもつでしょう。知的好奇心が刺激され、ワクワクしながら商品を購入することなどが該当します。
Act(行動・ライフスタイルに関わる価値)
顧客の身体的な変化や、実際のライフスタイルに関わる価値のことです。例えば、美容液を使用して効果がひと目でわかると、より価値を実感しやすくなります。
Relate(準拠集団への帰属価値・社会的経験価値)
特定の集団に属することで得られる経験価値のことです。例えば、ファンクラブや限定イベントへの参加など、帰属することで特別感を得られる体験などが該当します。
CXとUXの違い
CXと似ている単語に「UX(User Experience)」があります。UXはユーザー体験のことで、サービスや製品によって顧客がどのような体験をするかを意味する単語です。例えば、化粧品の場合「肌の凹凸が目立たなくなった」「化粧ノリがよくなった」、お菓子の場合は「手を汚さずに食べられた」、寝具の場合は「睡眠の質が改善された」などの体験をUXといいます。
CXとUXの主な違いは、対象者と内容です。CXは顧客全体が対象ですが、UXは特定の商品やサービスを利用した人のみが対象になります。つまり、CXのほうが対象者が広いのです。
また、CXは物流・店舗接客・利用体験・アフターサービスなど、自社が提供する体験すべてを指します。UXは、特定のサービスや製品を利用した人の経験なので、対象となる範囲が狭まるといえるでしょう。どこまでをUXとするかは、人によって異なる場合があります。
CXとCSの違い
「CS(Customer Satisfaction)」も、CXと似た単語です。CSは顧客満足度のことで、商品・接客サービス・関連する体験によって、顧客がどのくらい満足できたかを表します。CXとCSは意味合いが大きく異なる単語です。
CXは結果に至る過程を意味するのに対し、CSは体験によってどのくらい満足できたかという結果を表します。つまり、CXの結果を測るのがCSといえるでしょう。
CX(顧客体験)が重要とされている理由
CXが重要とされている主な理由は、以下の3つです。
- 競合他社との差別化
- サブスクリプションビジネスの普及
- 「コト消費」や「トキ消費」へのシフト
それぞれ解説します。
競合他社との差別化
近年、競合他社との商品・サービスの差別化が非常に難しくなっています。どの市場もさまざまな商品・サービスで溢れ、成熟しているためです。インターネットを利用するユーザーも増え、多数の選択肢のなかで比較検討することが当たり前になっています。
成熟した商品・サービスで溢れ、選択肢が増えた現状で、消費者に自社の商品・サービスを購入してもらうためには、CXを高めてロイヤルティ向上を目指すことが必須なのです。
サブスクリプションビジネスの普及
「モノ消費」から「コト消費」への変化の背景に、サブスクリプションビジネスの普及があります。
動画・音楽配信だけでなく、今では自動車やソフトウェア・電子書籍・雑誌など、さまざまな業種がサブスクリプションビジネスに変化しています。CXに不満があると途中で解約されるため、CXに力を入れる必要性が増しているのです。
「コト消費」や「トキ消費」へのシフト
商品やサービスの機能そのものよりも、商品・サービスを利用したことによって得られる体験に重きを置く「コト消費」が浸透しました。近年は特定の場所、時間でしか味わうことのできない体験である「トキ消費」を求める傾向が高まっています。
消費者が「モノ消費」から「コト消費」や「トキ消費」などの体験を重視するようになったことから、CXが重視されるようになりました。
CX(顧客体験)を向上させることによる4つのメリット
CXを向上させると、顧客の満足度や信頼度を高められます。結果として、利益の改善や経営の安定化などにも繋がるでしょう。以下、CXを向上させることによるメリットを4つご紹介します。
ブランディング・差別化に役立つ
CXを向上させると、自社にしかない商品・サービスを開発できるようになります。ブランディングや差別化をしやすくなるでしょう。ブランディングとは、特定の分野における認知度を高めるとともに、市場におけるポジションを確立して顧客からの信頼を勝ち取るための施策です。
CXを向上させ続ければ、他社には提供できない体験が得られる商品・サービスを開発できます。「これをしたいなら、この会社のこれしかない」と顧客に思ってもらえるでしょう。ブランディング・ポジショニング・差別化において、CXの向上は非常に効果があります。
顧客離れを防止できる
顧客離れを防止できることも、CXを向上させるメリットです。顧客離れは、顧客が「思ったような商品・サービスではなかった」と感じたときに発生します。より具体的には「自分の理想とは違う方向性のものだった」「思ったよりよくなかった、期待を下回った」「がっかりする接客や品質だった」というときに、顧客離れは発生するといえるでしょう。
CXを向上すれば、顧客の期待を上回るよい商品やサービスを作ることができます。CXを向上させる過程で「自社の商品・サービスはどのようなものなのか」を深掘りすることになるので、顧客イメージと実際のサービス・商品とのズレを抑制することも可能でしょう。
リピート率が向上する
CXを向上させ続けると、その商品・サービスでしかできない体験が確立されるので、リピート率が向上します。リピートしてもらうには「ほかのものよりも品質が高い」「コスパがよい」「類似商品がない」などの強みがないといけません。CXを向上させれば、品質や独自性も向上するので、リピート率が向上するでしょう。
リピート率が向上すれば、安定して利益を上げられるようになり、さらに高いレベルでCXを向上させられるようになります。リピート率が向上し、利益増により予算が増え、よりよい商品・サービスを開発できるようになります。さらにリピート率が向上するという好循環を生み出すきっかけにもなるでしょう。
よい口コミを獲得しやすくなる
CXが向上すると、よい口コミを獲得しやすくなります。昨今は、X(旧:Twitter)やInstagramをはじめとしたSNSの口コミを見て、商品が爆発的に人気になるケースも少なくありません。CXを向上させて、競合ではできない体験を提供できるようになれば、よい口コミを得やすくなります。さらに顧客を増やすきっかけができるでしょう。
よい口コミが増えると、広告宣伝にあまり費用をかけなくても自然と顧客が集まるようになります。別のマーケティング手法を試せるようになる、開発費用に多くの予算を投じられるようになるなど、よい影響を与えるかもしれません。
CX(顧客体験)を向上させるための6つのポイント
CXを向上させるポイントは、以下の6つです。
- ペルソナを設定する
- カスタマージャーニーマップを作る
- NPSを活用する
- PDCAサイクルを回す
- 全社一丸となって取り組む
- ツールを活用する
それぞれ詳しく解説します。
ペルソナを設定する
CXを向上させるためには、まず「どのような人に、どのような体験をしてほしいのか」を明確にしなければいけません。素晴らしい体験でも、ターゲットが求めているものでなければ意味がないのです。例えば、ボディビルが好きな人に「海外の有名選手Aが監修したトレーニングプログラム」といえば響きますが、ボディメイクに少し興味がある程度の人は有名選手Aがわからず、あまり響かないでしょう。
ターゲットを定めるために、まずはペルソナを設定します。ペルソナとは、具体的なユーザー像のことです。年齢・属性・性別・趣味趣向などを細かく設定します。詳細なユーザー像を設定すると「この人はどのようなものを求めているか」という軸でCXを改善できるので、より効果が出やすくなるでしょう。
カスタマージャーニーマップを作る
カスタマージャーニーマップとは、ペルソナと合致する人物が、商品・サービスを認知してから購入するまでどういった経路を辿るのかをまとめた資料です。購入後の体験や情報共有などまでをまとめることが多いです。
マップを作成すると「どうやって知ってもらうか」「比較される競合と負けないためにどうするべきか」「購入後もよい体験をしてもらうためにどうするか」など、各ステップにおけるCX改善がしやすくなります。認知から情報共有まですべてのステップにおいて、良質な体験を得られるサービス・製品を開発できるでしょう。
NPSを活用する
NPSとは「Net Promoter Score」の略で、顧客ロイヤルティを測る指標のことです。CXを向上させる際に、よく利用される手法といえます。
NPSを調査するメリットは、顧客の回答が数値で示されるので測定が簡単なことです。調査結果も非常にシンプルなため、誰が見ても理解しやすい点も大きなメリットといえます。CXを向上させるには必須の施策といえるので、積極的に活用しましょう。
PDCAサイクルを回す
PDCAサイクルとは「Plan:計画」「Do:実行」「Check:検証」「Action:改善」をまとめたフレームワークです。継続してCXを改善するためには、企画するだけ、顧客満足度を調査するだけ、では十分ではありません。ペルソナやカスタマージャーニーマップをもとにCX改善施策を計画し、実行したのちに検証・改善して、再度実行するサイクルを回し続けなくてはいけないのです。
検証・改善においては、NPSによって浮かんだ課題に対して、さまざまな施策を行いましょう。
全社一丸となって取り組む
CXを向上させるには、全社的な取り組みが必須です。マーケティング部や営業部だけでCXを向上させるのは困難なため、会社の経営層がCXの重要性を認識し、社員全員のベクトルを合わせることが大切になります。
全社が同じ方向を向いて取り組むメリットは、判断が早くなることです。上層部含む全社員がCXの重要性を理解していれば、施策を実行するまでの意思決定がスピーディーになります。PDCAサイクルを高速で回せるようになるでしょう。
ツールを活用する
CXの質を向上させるために役立つツールは数多くあります。自社のビジネスモデルに合ったツールを活用しましょう。
それぞれのツールの特徴と、活用方法を解説します。
MA(マーケティングオートメーション)
MAとは、マーケティング作業や実行フローを自動で行ってくれるツールです。
それぞれの顧客に合わせて適切なタイミングで情報を発信でき、購入を促進できます。顧客が興味をもってくれそうな情報をピックアップして提供するので、内容を確認してもらいやすいといえます。
顧客が商品・サービスを求めているタイミングで情報提供できるので、CX向上に役立つでしょう。
Web解析ツール
Web解析ツールとは、Webサイトのデータを分析するツールで、アクセス解析ツールともよばれています。
ユーザーの流入経路・性別・年齢・地域・ページ閲覧数・ページ内の行動など、細かな分析が可能です。Web解析ツールを使うことで、Webサイトの課題・改善点が明確になり、施策後の効果検証もできます。CX向上には欠かせないツールといえるでしょう。
CRMツール
CRMツールとは、顧客を管理するツールです。
顧客の個人情報・購入履歴・問い合わせ履歴・アンケート結果などの一元管理が可能です。CRMツールを使うことで、異なる部署間でも顧客情報の共有が容易になります。それぞれの顧客に合わせた施策が可能となるので、CX向上に役立つでしょう。
Web接客ツール
Web接客ツールとは、見込み顧客や既存顧客とオンライン上でコミュニケーションを取れるツールです。昨今は、オンライン上で接客するためのツールを活用する企業も増加しています。
Web接客ツールには、Webサイトを訪問したユーザーからチャットで質問を受けられるツールや、既存顧客と連絡を取れるツール、Webミーティング形式で会話できるツールなど、さまざまな種類があります。チャットツールのなかには、顧客の問いに対して自動返信できるタイプもあり、接客レベルの安定度向上や効率化に役立てている企業が多いです。
CX(顧客体験)向上に成功した事例
CX向上に成功した事例を、7つご紹介します。
- スターバックス
- 東京ヤクルトスワローズ
- ソニー損保
- スシロー
- 無印良品
- ユニクロ(UNIQLO)
- ガリバー
他社の事例を参考に、自社でもできそうな施策を積極的に取り入れましょう。
スターバックス
世界的なコーヒーチェーンであるスターバックスでは、顧客に特別な体験を提供することを大切にしています。
例えば、コーヒーだけでなく、季節限定商品やフラペチーノなどの幅広い商品を展開し、店内は素敵なBGMとおしゃれなインテリアで演出されています。リラックスできるフカフカのソファなど、コーヒーを買うだけでは味わえない上質な体験を提供してくれるのです。
スターバックスで過ごすこと自体が「おしゃれ」「かっこいい」というステータスになることも、スターバック独自のCXといえるでしょう。
東京ヤクルトスワローズ
プロ野球球団の東京ヤクルトスワローズは、ファンクラブの会員数増加を目標に、NPSを活用して顧客の声を収集しました。
調査によって、入会時にもらえる特典やグッズ、選手と触れあえる機会が重要なことが明確になり、本拠地から遠い会員は、会員の体験価値が低いことも判明しました。NPSの調査をもとに、選手と一緒に写真が撮れるイベントや、地方限定グッズ・ユニフォームの販売など、さまざまな施策を行うことで、顧客ロイヤルティが向上し、ファンクラブ会員数を大幅に増やすことに成功しています。
ソニー損保
ソニー損保では「お客様の声」「コエキク改善レポート」と称して、顧客の声を集めてサービス向上に活用しています。
自社に集められたよい口コミだけでなく、悪い口コミもホームページ上で公開し、具体的にどのように考え、どのように改善したのかも公開しています。顧客に対する真摯な姿勢が信頼関係の構築に繋がり、ダイレクト自動車保険で19年連続売り上げ1位という記録に繋がりました。
スシロー
スシローは、コロナ禍でも寿司業界の首位を走っていました。その要因は、オンライン・オフラインを含めたCXの向上に努めていたことでしょう。
店内での飲食が一般的であった回転寿司を、家庭でも楽しめるように「お持ち帰り スシロー」という新しい体験を創出しました。メディアを活用して、テイクアウトができるという印象を与えることにも注力しました。操作性の高いスマホに最適化したサイトへのリニューアルやアプリの提供などを行い、Uber Eatsや出前館でのデリバリーと連携することで、スシローアプリがなくてもテイクアウトを利用できる環境を作ったのです。
オンラインにおける体験を充実させたコミュニケーション設計により、CXを向上させ、現在でも売り上げを伸ばしています。
無印良品
生活雑貨や家具で有名な無印良品は、商品を検討する段階から購入するまでの一連の流れについて、考え抜くことを重視しています。
例えば、顧客からの要望を参考にして商品を開発し、モニターに使用してもらって意見を収集する取り組みが挙げられるでしょう。ネットショップには顧客が意見を自由に伝えられるサービスが導入されており、集まった意見をもとに週1回ミーティングを行っています。
顧客の声に真摯に耳を傾け、CXを向上させ続けている点が、多くの顧客に支持されている要素といえるでしょう。
ユニクロ(UNIQLO)
日本のみならず世界で展開しているユニクロ(UNIQLO)は、ユニクロのアプリ内でAIチャットボットが接客してくれる「UNIQLO IQ」というサービスを提供しています。
チャットボットを質問の回答に利用している企業は多いですが、UNIQLO IQでは、おすすめのコーディネートの提案や、店舗の在庫状況の確認、購入などのショッピング機能などもチャットで行うことができます。店舗での接客に近しい体験を顧客に提供しているのです。
以前は専門店でのみ対応していたスーツのオーダーを、ユーザー自身の採寸や店舗での採寸データをもとに行えるようになりました。オーダーメイド感覚でスーツやワイシャツを購入できることも、顧客が離れない理由の一つでしょう。
ガリバー
株式会社IDOMが運営する中古車買い取り・販売の大手ガリバーでは、デジタル空間でもリアル店舗と変わらない接客をするという目標を掲げています。
ユーザーに合わせた接客を強化すべく「KARTE」を導入し、セグメントに合わせたバナーの出し分けから着手しました。問い合わせ内容による振り分けはチャットボットが行い、コミュニケーションはスタッフがオープンチャットで対応し、チャットの文言も顧客のニーズに合わせて変更しています。
きめ細かい対応を徹底し、オンライン上のCXを向上させ、コンバージョン率・利益アップに成功したのです。
まとめ
今回は、CX(顧客体験)向上について詳しく解説しました。
今回解説した内容を参考に継続的に改善活動を行えば、CXは必ず向上できます。一部の人や一部の部署だけがCX向上に取り組んでも思ったような効果が出ないケースが多いため、全社一丸となってCX向上に取り組みましょう。